ものを盗む客について

来客というのは、慣れている人はなんでもないのかもしれないが、気を遣う。お客様が、ウンコをなさるかもしれない、と思うと、便器に顔を近づけて、磨かざるを得ない。

うちに、金目のものは、アウガルテンの陶磁器ぐらいしかないが、テレビで見たところによると、富裕層の客は、一度に来る数も多く、なかには、調度品、小物などをくすねる客もいるらしい。

そこで、主人は、使用人を要所、要所に立たせ、(監視している様子を見せずに)監視させる。客が何か、調度品類を盗んだのを目撃した時は、ひじょうに繊細な方法で、自覚を促すのだが、肝心のそのやり方を忘れてしまった。もちろん、貴方盗みましたね、などとは言わない。ポケットがふくらんでますね、というのでもなかった。なにかとても微妙な、相手を傷つけないたしなめ方だった気がする。もちろん、その客は二度と招かれないだろう。社交界に噂が流されるかどうかはわからないが、社交界の外には行かないそうだ。

現に、日本でも、デヴィ夫人の松涛の邸宅で、宝石でできたブドウなどの果実が、だんだん盗られて小さくなっていったという。イヤな気分だわ、と彼女は嘆いていた。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック