美輪明宏『双頭の鷲』

美輪明宏『双頭の鷲』を見る。二回目だが、やはりすごい。舞台装置に金がかかっている。フランス式大芝居はきっと本場にはもうないかもしれない。赤字ではないのか、と少し心配になる。

異色だったのは、

咳をなさるときは、タオルかハンカチで口をおさえてください

という趣旨のアナウンスが休憩ごとに2回づつ流れたことである。美輪明宏先生は、著書でも、ずっと咳をしている客がいて、商売敵が邪魔しに来たのかと思うぐらい、と昔書いていたが、とうとう、黙っていられなくなったのだろう。

特にこのジャン・コクトーの芝居は、沈黙の場面も多い。しかも、密度の高い、張りつめたような沈黙を必要とする。台詞がないところが空白だ、と思うと大間違いで、きわめて濃密な意識が交錯している。水の表面が穏やかでも、それは、左右からものすごい流れが拮抗しているようなものである。

そんなときに、「ゴホッ」と聞こえたら、その場面だけでなく、過去に遡って。それまでの台詞もぶち壊しなのだ。アナウンスのおかげで、咳は2,3回しかなく、静寂の場面では、観客もかなり、緊張していた。よいことである。大衆芝居ではないのだから。

音楽会『愛』でも、歌い終わった途端に、感動的な間がはりつめているとき、せき込む人がいたが、殺意を覚えたものである。今年は、音楽会の抽選に漏れたので、殺意を抱かなくてすむ。

美輪明宏先生自身も、「咳で骨折する」ようなひどい病気で、コンサートも芝居も観に行くのをあきらめていた時期があったので、こういうアナウンスをする資格はある。

実は、私も、授業のシラバスで、ひどい咳が出る人は、欠席してください、と書こうと思っては、思いとどまってきている。1分おきに咳をされて、話の腰を折られたことが、何十回もあるのだ。しかし、こんなことを書いて、事務方や役職者に叱られそうだ、とも考え、また、バチがあたって、自分が咳の出る病気にでもなったら嫌だな、と思って、やめているのである。


この記事へのコメント

2008年09月18日 22:06
厚生労働省等がインフルエンザに備えて「咳エチケット」を広めようと必死ですので、協力してあげた方がよいと思います(笑)

「咳エチケット」
○  咳・くしゃみの際にはティッシュなどで口と鼻を押さえ、他の人から顔をそむけ1m以上離れる。
○  呼吸器系分泌物(鼻汁・痰など)を含んだティッシュをすぐに蓋付きの廃棄物箱に捨てられる環境を整える。
○  咳をしている人にマスクの着用を促す。
○  マスクの装着は説明書をよく読んで、正しく着用する。
2008年09月19日 00:54
・・・えっ こんなものが・・・知れませんでした。
気が向いたら印刷して大学で配布、までいかなくとも、読みあげたいと思います。

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